かつては未成年の問題だと思われてきた発達障害が、「大人の問題」として急速に認知され始めている。メディアでの露出も増え、自分や周りの人間に対して「実はそうなのかも」と思った人もいるのではないか。果たして「大人の発達障害」を抱える社会人たちの現状とはどんなものなのか。生きづらさを抱える大人たちの姿に迫った。

◆症状はないのに「発達障害になりたい人」が生まれている?

 多くの大人の発達障害の方々もそうであるように、発達障害の認知が進んだとはいえ、カミングアウトするのはまだまだハードルが高い。週刊SPA!が当事者300人に「誰かに相談しているか?」と尋ねた結果でも、やはり半数以上は「恥ずかしくて誰にも相談していない」と答えている。

 ただ、その一方で病院には発達障害かどうかを確かめようとする人が殺到している。6月に新作『「発達障害」と言いたがる人たち』を上梓した精神科医の香山リカ氏は、そういった悩みを積極的に打ち明ける層のなかに「自分の仕事やプライベートでの問題の原因を、発達障害に求めようとする心理が働いている人たちが生まれているのではないか」と分析する。

「今の発達障害を巡る状況を見ていると、いくつかに分類できると思っています。まずは本当に発達障害で困っている人。次に正確な診断は出ていないけど症状があるグレーゾーンの人。それに加えて、『自分が仕事などでミスをするのは発達障害のせいではないか』と、発達障害に原因を求めたがる人。

 もちろん、なかには本当に発達障害の人もいるでしょうが、そうではないのに信じ込んでしまっている人が生まれていると思います」

 実際に香山氏が見聞きした話では、ある女性の患者が精神科にかかった際に「症状は出ていない」と診断を受け、「じゃあ私が片付けができないのは、単にダメな人間だからって言うんですか!」と憤激したケースがあったという。

「彼女たちは発達障害という“名づけ”を求めているんです。それは、もともとの発達障害とは別の次元で、その思いを駆り立てている社会の問題だと考えたほうがいい。今は他人との接し方でも、うまく立ち振る舞える“コミュ力”があまりにも重視されすぎて、『すべてを器用にこなさないといけない』という強迫観念にかられています。社会が求める理想の型にハマらないと、途端に生きづらくなるし、その結果、発達障害が気持ちの落としどころになっている」

 香山氏が最も危惧しているのは、「本当に困っている人たち」の姿が見えにくくなることだ。

「実際に障害のある方たちは自己主張が苦手な場合が多いので、“別の問題を抱えた人たち”の声に紛れてしまう危うさがある」

◆家での振る舞い一つで「発達障害認定」される

 また、「夫が発達障害なのでは?」と疑う既婚女性もいたという。その根拠は「夫がやたらと一人になりたがる」「記念日のプレゼントがない」「食事やテレビを見ているときに急にキレる」「ネットやゲームに没頭する」などなど。程度の差こそあれ、世の既婚男性なら誰もが「それで発達障害認定されるのか……」と絶句するのではないか。

「そうして発達障害の範囲が広がっていくと、それこそ3人に1人くらいが当てはまることになる気がします。精神疾患にはトレンドがあって、少し前はうつ病・新型うつブームでした。今は発達障害も一種のトレンド化している部分があるのではないでしょうか」

 発達障害の範囲が広がれば、我々の個性や主張すら駆逐されてしまうムードが生まれるかもしれない。しかし、「無個性しか生きられない社会」など、味気ないものでしかないと思うのだが……。

《「発達障害」を誰かに相談しているか?》
恥ずかしいので誰にも話していない 148人
心療内科や精神科を受診している 69人
家族だけには話している(もとから知っている) 44人
親しい友人には話している 29人
会社内では隠している 20人
会社にも報告している 18人
会社には未報告だが同僚/上司にはそれとなく話している 8人
(複数回答可)

【香山リカ氏】
精神科医。豊富な臨床経験をベースに、現代人の抱える心の問題に鋭く切り込む。近著に『「発達障害」と言いたがる人たち』(SB新書)など
― 大人の発達障害 ―



(出典 news.nicovideo.jp)


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