交通事故脱税などで罰の有罪判決を受けた人が、罰を払えない場合、どうなるのでしょうか。

六法全書を開いてみると、刑法18条には「罰納することができない者は、1日以上2年以下の期間、労役場に留置する」という規定が置かれています。つまり、罰が払えなかった場合は労役場に連れて行かれ、働かされることになります。

が払えないなら、体で払え」「逃げ得は許さない」ーー。労役場留置といわれるこの制度は、実はそんな制度なのです。

労役場留置、2017年4285件

『検察統計調』によると、2002年の罰刑総件数は831605件でしたが、2017年239259件に減少しています。これは、交通事故などの発生件数が減ったためです。

一方で、労役場留置処分となった件数は2002年5068件)から急増し、2003年7000件をこえました。2010年以降は件数が減っている(2017年4285件)ものの、罰が払えずに労役場留置となる割合は高くなっています。

2003年は罰刑総件数のうち労役場留置となる割合は0.89でした。ところが、2010年に1.9をこえ、2013年以降は1.7~1.8の間を推移しています。2017年は1.792003年の約2倍です。この背景には、飲酒運転などの厳罰化による罰額の引き上げや、罰を払えない経済的困窮者の増加があります。

もちろん、罰を払えないからといって、だれもがただちに労役場に連れていかれるというわけではありません。検察官の裁量で、生活保護受給者や年金受給者など資がない人に対して、罰の延納や分納が認められることもあります。ただし、特別な事情もなく、納が難しい場合は最終手段として労役場に留置されることになります。

なお、少年に対しては、労役場留置の言渡しをすることができません(少年法54条)。そのため、少年や近親者などの経済的な援助者が罰を払えなかったとしても、労役場に留置されることはありません。

労役内容はひたすら「ひも通し」

労役場に留置されると、作業内容や衣・食・住について「懲役受刑者に関する規定を準用」(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律288条)することになります。つまり、懲役刑の受刑者とほぼ変わらない環境で労役に勤しみ、共同生活を送ることになります。

実際に労役場に留置された経験をもつ元新聞記者史之助さんの著書『労役でムショに行ってきた』(2011年図社)によると、1日3食付き、全週休2日制であることに加えて、休日は何もしなくても労役をしたことになったそうです。さんは「労役というものは軽作業をさせることより留置することに重きを置いている」ことが分かったと著書で述べています。

では、具体的にどのような作業をすることになるのでしょうか。

さんによると、平日の1日8時間、袋のひもを800個通す作業や、ひもの片端だけをひたすら堅結びする作業をおこなっていたそうです。

また、偽は定かではありませんが、労役体験者とみられる方のブログによると、「作業はハンガーについている洗濯ばさみ工作」とのこと。懲役刑の受刑者が刑務所おこなう「刑務作業」とほぼ変わりません。

1日働くと「5000円」払ったことに

刑が下される場合、「被告人を罰20万円に処する。ただし、罰納する事ができない場合は、5000円を1日に換算した期間、被告人を労役場に留置する」などと、日当と期間についても言い渡されます。

多くの場合、1日の留置は5000円相当と換算されています。つまり、罰20万円だった場合は、40日間の「労役」が必要となります。

ただ、留置の上限は2年間です。もし、1日5000円を2年間続けた場合でも払えないような巨額の罰の場合はどうなるのでしょうか。裁判官の裁量次第で、日当数万円などという判決も理論上はありえるのです。だからといって、労役が重くなることもありません。

諸外では労役場留置の代わりにボランティア

刑は、刑務所への収容を回避するための措置でもあります。「ムショ帰り」の烙印押しを避けることができるという長所があるのです。

ところが、罰を払えなかった場合は実質「ムショ帰り」とほぼ変わりません。また、同じ罰額でもお金持ちは簡単に払えますが、お金がない人は労役場留置となるため、不だと摘されることもあります。

もちろん、「払えないならば仕方ない」となれば、なんのための罰刑なのかわかりません。払えなかった「お金」の分を埋め合わせるための「なにか」が必要です。

では、罰を払えない人に対し、労役場に留置するのではなく、社会奉仕活動を命じているもあります。命令の内容は、道路公園などの清掃や落書きの除去などのボランティア活動です。

日本でも同様の制度を導入することに前向きな意見がありますが、労役が課されるのは住所不定や所在不明の人が多いという現状もあります。そのため、ボランティア活動の対者として不相応ではないかという理由などから、導入に消極的な意見もあるようです。

<参考文献>

出敏裕・著『刑事政策(第2版)』 (2018年)  成文堂

藤本哲也著『刑事政策概論(第7版)』 (2015年)  書院

史之助著「労役でムショに行ってきた!」 (2011年)  図社

守山正・安部哲夫(編)『ビギナーズ刑事政策(第3版)』(2017年)成文堂

弁護士ドットコムニュース

罰金払えないなら「体で払え!」 刑務所で1日5千円の軽作業をする「労役場留置」の仕組み


(出典 news.nicovideo.jp)


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